
動脈硬化予防・生活習慣病
動脈硬化予防・生活習慣病
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頸動脈狭窄症は脳梗塞の原因になり得る疾患ですが、適切な内科治療および外科治療によって、脳梗塞を予防することができます。首もとで脈を測るときに触れる血管を総頸動脈といい、下顎骨の下あたりで外頸動脈と内頸動脈に分かれています。内頸動脈は心臓から脳へ血液を送る血管で、分岐部直後の内頸動脈起始部という部位にプラーク(コレステロールの塊)が蓄積すると、血管が狭窄する内頸動脈狭窄症を起こします。内頸動脈起始部は動脈硬化の好発部位であり、内頸動脈狭窄症は、アテローム血栓性脳梗塞を引き起こす主要な原因となります。
脳梗塞の原因となる内頸動脈狭窄症を予防するためには、高血圧症、糖尿病、脂質異常症などの動脈硬化を進める因子のコントロールや、血栓を予防する治療薬を講じることが重要です。動脈硬化の危険因子となる疾患は、食事療法と薬物療法でコントロールします。血栓の予防は抗血小板薬の内服で、ある程度の効果が期待できます。
このような内科的治療のみではコントロールが難しい場合や、脳梗塞を発症してしまった場合には、血管の修復が必要になることもあります。
血管を修復する治療には、狭くなった頸動脈の内膜をはがす外科手術(頸動脈内膜剥離術)と血管内にカテーテルを挿入して風船(バルーン)で狭くなった部分を広げ、網目状の筒をセットする血管内治療(頸動脈ステント留置術)があります。血管内治療は治療成績もよく、患者さんへの身体的負担が少ないこともあり、急速に普及し、日本では2008年4月から保険適用されています。
問診では、一過性脳虚血発作や脳梗塞を起こしたことがある症候性か、あるいは起こしたことがない無症候性かで治療法が異なりますので、まず、病歴についてうかがいます。
「症候性」は再び脳梗塞を起こす確率が高いといえます。狭窄率が70%以上の場合、あるいは狭窄率が50~70%であっても、血管の内膜に潰瘍や剥がれるおそれのあるプラークが認められる場合は、血液を固まりにくくする抗血小板薬の投与だけでなく、外科手術(頸動脈内膜剥離術)や血管内治療(頸動脈ステント留置術)を検討する必要があります。
一方、「無症候性」で狭窄率が60%以下の場合は、抗血小板薬を服用いただきながら、頸動脈エコーや頸部造影CTアンギオグラフィという検査を定期的に受けていただき、経過観察します。狭窄の進行や何らかの症状が出現したときには、症候性と同様に頸動脈内膜剥離術や頸動脈ステント留置術を検討します。
動脈硬化が起こりやすい内頸動脈起始部は、超音波検査で簡便に評価できる部位です。脳梗塞を発症する前に進行した頸動脈狭窄を発見することができます。
頸部にプローブ(探触子)という器具をあてて行う検査で、体に負担の少ない方法です。狭窄部分の発見だけでなく、狭窄度、狭窄の形状、狭窄部分を通過する血液の速度(流速)、内膜の厚みの程度、プラークの性状などが判定できます。
点滴で造影剤を体内に注入し、CTで頸部の血管の状態を描出する検査です。動脈の中にカテーテルを入れて行う脳血管撮影と比較し、体への負担が少なく、血管の狭窄度を正確に測ることができます。石灰化が進んだ状態でも正確な評価ができます。
プラークの状態を調べるのに適した検査です。出血を繰り返すような不安定なプラークも明瞭に描出でき、病変の安定度を判断できます。
心エコーなどで心機能をチェックしておくことも必要です。
以上のような検査で、頸動脈狭窄病変の評価と全身状態のチェックをしたうえで、適切な治療法を検討します。
主に足の血管に起こる動脈硬化で、末梢動脈疾患とも呼ばれています。足に冷感やしびれ、歩行時に痛みを感じる、という症状があり、重症化すると安静時にも症状が現れ、手足に潰瘍ができ壊死することもあります。とくに50歳以上の男性に多い傾向があり、喫煙・肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症・慢性腎不全などが原因と考えられています。閉塞性動脈硬化症を発症した場合には、下肢動脈だけでなく全身の血管も動脈硬化が進んでいる可能性が高いので注意が必要です。
典型的な症状は間欠性跛行(かんけつせいはこう)と呼ばれている歩行障害です。
「間欠性」とは間隔をおいて起きたり起きなかったりすることで、「跛行」とは、びっこを引くという意味です。安静時や歩きはじめには痛みはありませんが、歩き続けているうちに痛みや疲労感を生じ、足を引きずるような歩き方になります。数分間休むと症状は軽減し、再び歩きはじめることができますが、歩きはじめるとまた痛みや疲労感を感じるということを繰り返します。痛みや疲労感は、股関節から足首にかけて起こります。とくにふくらはぎの疲れ、だるさ、痛み、こむら返りなどが起こり、おしりや太ももに同様の症状が生じることもあります。
足の血管病が疑われる場合、足の皮膚や筋肉の状態、動脈の拍動、痛みの程度などをチェックし、必要に応じて検査をします。
足関節上腕血圧比では、心臓と足関節との間の動脈が狭くなっているか、あるいは閉塞性動脈硬化症が起きているかを測定します。
ABI値1.0以上が正常で、0.9以下であれば、足の動脈に病変があると断定できます。この数値が低いほど重症とされます。
閉塞性動脈硬化症の診断で、ABI測定とともによく使われている検査です。検査中に下肢全体を描出することができ、カラードプラ法の併用で、詳細に血管病変をとらえることができます。
回転ベルト上を歩行するトレッドミル歩行負荷試験です。運動前後のABIの変化や、どのくらいの歩行距離で歩行障害(跛行)が起きるか、その程度はどれくらいか、といった情報から血流不足の重症度を客観的に調べることができます。
ヨードが入った造影剤を注入して、X線をあてて動脈の形態を調べる動脈造影検査は、閉塞性動脈硬化症の確定診断に欠かせない検査ですが、近年は、CTやMRIの装置を使うCTアンギオグラフィやMRアンギオグラフィなども普及しています。
CTアンギオグラフィは、高速で広範囲にわたり、判別能力の高い画像が得られるのが特徴です。ただし、ヨードおよびヨード造影剤アレルギーの方や慢性腎不全の患者さんにはできません。
MRアンギオグラフィは、放射線や造影剤を使用せずに、血管の様子を描出します。ただし、強い磁場を用いるため、ペースメーカーや除細動器を埋め込んだ患者さんや人工内耳を埋め込んだ方は、原則としてできません。
閉塞性動脈硬化症の治療は重症度に応じて異なります。重症度を分類したFontaine分類では、以下のような指針が示されています。
I度(軽症)は、禁煙をはじめとする動脈硬化危険因子の管理と治療、II度は、薬物療法に加えて運動療法を行い、血流をよくするために血行再建術が必要かどうかを検討します。
IIIまたはIV度(重症)では、血行再建術を積極的に検討し、潰瘍や壊疽によってこれができないときには、新しい血管をつくる血管新生療法も検討します。
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